調子麻実『共鳴する子宮』

statement2

女は子宮で生きている。それぞれが変化し微妙に違う周波数を放ちながら。女性にカメラを向けるとき、彼女達の周波数に私の子宮が共鳴する瞬間がある。今回、姉の写真が数枚ある。同じ成分で出来た子宮どうし、姉妹ならなおさら。モノを撮る時も同じ。

人であれモノでれ自分のあらゆる感覚を子宮の共鳴は直感に換えて知らせてくれる。子宮という受信機があらゆるモノと共鳴する瞬間。私はシャッターを押す。

profile

1984年 岩手県生まれ

 

tskinterview

TSK:タイトルの『共鳴する子宮』とは。
調子麻実:私は今回の展示が初めてで、まずタイトルをボンと決めてから写真のセレクトを始めました。過去7年間分の写真をバーっと振り返ってみたら、友達の女の子たちをすごく撮っていた。それで単純に、女が撮った女の写真だなあと。

被写体として女性を撮り始めたきっかけは?
環境が大きかったと思います。女姉妹なんですけど、お姉ちゃんがいて。高校が女子校だった。周りにおもしろい女友達が多くいた次期があった。みんな、個性はバラバラ。でも引っかかるな、なんだろう。共通項と言ったら、子宮かなあと思ったのがきっかけ。

(子宮には)けっこう支配されていると思いますよ。メンタルも身体も。「女は子宮で考える」って言葉、よくできてるなあと思います。

被写体は夜の街に潜む女性が多そうですね。
だいたい知り合うきっかけが飲み屋で。「かわいいねー!写真撮らせて!」って、飲みながら友達になっていく感じですね。

IMG_1621

この1枚、なんだかとてつもない状況に見えますけど。
友達なんですけど。チャリンコで事故って入院しちゃって。だけど抜糸前に退院できて、一時期通院していた時期の写真がこれなんです。近所に住んでいるんですけど、この子は自炊が全然できない。そこで「うちに食べに来なよ」と。で、一応……撮らせて?みたいな。そしたら「いいよいいよ」って。

じゃあ、股に描かれた線は手術のときの……
そうですそうです。お風呂に入れないから。

このキズ、内側からきてますよね。
私も詳しいことは聞いてないんですけど、たぶんサドルにやられたんじゃないかと。

写真はどれくらい続けているんですか?
東京に出てきてからなので、7年くらいだと思います。ちゃんとした個展は今回が初めて。これは2、3年くらいをまとめたもの。続けていると、写真ってどんどん変わっていくじゃないですか。私にとってはこの1、2年で変わってきてしまった感がとてもあって。このタイミングでまとめないと入ってこなくなっちゃうであろう写真で、今回の展示は組んでみました。

どう変化しているんですか?
これ、姉なんですけど。去年ぐらいから、姉の写真を撮り始めています。

IMG_1624

男性を撮ろうとは思わないんですか?
撮ったことはあるんですけど。なんか、うまくいかなかった。関係性ってあるじゃないですか。そのなかで撮るって……そそらないというか。あんまりこう……そんなに性欲ないのかな?って(笑)。だからといってレズビアンではないんですけど。

女はおもしろいと思うんです。それこそ、女子校のなかみたいな。教室のなかをナプキンが飛び交っているような。エグイんですよ、意外と。それから、彼女たちを通して自分のなかを探るというのはあると思います。これからも女性は撮り続けていくんだろうなと思います。

 

information

調子麻実
『共鳴する子宮』
2016年1月12日〜24日

TOTEM POLE PHOTO GALLERY
東京都新宿区四谷四丁目22
第二富士川ビル1F
URL

開館時間12:00〜19:00
月曜休廊

tskreview2

調子麻実(ちょうし・あさみ)さんの存在を知ったのは、トーテムポールでひとつ前に展示していた菱沼勇夫さんのとき。展示を見終えて、DM置き場で目に留まったのが、調子さんだった。

IMG_0349

なにやら申し訳なさげの脱力したポージングで、こちらに股を見せる人物の下半身。なぜこの人はパンツ姿なのだろう。そして股のシミのような跡は……?

モノクロによって適度に情報量がそぎ落とされたおかげで「なにが映り込んでいるのか、イマイチよく分からない」。イマイチよく分からないから、ますます興味が出てきて「知りたい」と思ってしまう。

得てして、人はそういうものに弱い。

IMG_1625

調子さんの写真には、これまた良い案配で「イマイチよく分からない」写真が紛れ込んでいる。前の段落で書いたけど、繰り返そう。たぶん、モノクロだからだと思う。

この日、会場にいた調子さんに訊いてみると、カラー写真をモノクロに変換してプリントしているという。

本人はモノクロフィルムでずっと撮ってきた、と言っていたから、ここからの話はあくまでぼくの推論だけれど、調子さんはカラーの眼で撮影をし、そこからセレクトの過程においてモノクロの眼を取り出してくるんじゃないだろうか。と勘ぐってしまうほど、調子さんのモノクロには一癖、ギミックがある。

IMG_1627IMG_1623

調子さんは自然な流れから『共鳴する子宮』というタイトルをつけたみたいだけれど、言い得て妙なところがある。

「ヒステリー」という言葉がある。これの語源は古典ギリシア語で「子宮」を意味する単語であり、19世紀初頭まではヒステリーの原因が女性の骨盤内鬱血(うっけつ)によるものだと誤解され、医師たちのあいだで定説とされていた。

ヒステリーという言葉の響きこそあまりよくないかもしれないけれど、動物的にいえば、本能が理性を超えてビビビ!と動けるというのは、どんなものであれ、素晴らしい。生きている証であり、生き物としての証拠だからだ。その衝動が、一瞬間に宿る写真行為と相性よくないわけがない。

 

共鳴する子宮はたぶん、男には撮れない類のもの。不可侵領域である。

ぜひこれからもこのまま突き進んで欲しい。調子さんからはなにか、まだ見たことのないものを見せてくれそうな「余白」が感じられた。これからますます楽しみだ。

IMG_0348

余談だが、展示から帰ってきて、今日もらったDMと、昨年末にもらったDMを見比べたら、なんとバージョンアップしていた。というか、「股にクローズアップ」していた。恐るべし、調子麻実。

写真展は1月24日まで、トーテムポールフォトギャラリーにて。

 

この記事の著者

トモ・コスガ

トモ・コスガ

1983年生まれ、編集者。フォトグラファー・新田桂一に師事後、VICE MAGAZINE JAPAN編集部、EYESCREAM編集部、VICE MEDIA JAPANを経て独立。現在は故・深瀬昌久の作品管理と普及を目的とする「深瀬昌久アーカイブス」ディレクターを務めながら、主に写真関連の記事を書いたり、家事をしたり、ジムでマッチョを夢見たり、クワガタを飼育・採集、と多岐にわたって活動中。

http://www.tomokosuga.com/

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

ページ上部へ戻る