オマエは〝ガス〟を吸ったことがあるか?

  • 2016-1-20
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VICE MAGAZINE – Vice Fashion “Gas Face”より

 

ブルブルブル——

手に入れたばかりのiPhone3Gが震える。

すぐさまMacbookを開き、Mailアプリを立ち上げる。

時刻は夜の12時を過ぎたころ。

 

送信者、ジェシー・ピアソン。

 

「やあ、トモ。率直なメールをありがとう。
オマエが言いたいことはよく分かるよ。

しかしだな、
そもそもオマエは〝ガス〟を吸ったことがあるか?……」

 

2007年から勤めていた「VICE」での日課は、
日本との時差が14時間あるニューヨーク本部の編集長、
ジェシー・ピアソンとのやりとりだった。

10時間でも、12時間でもなく、14時間という時差がミソだった。
頑張ろうと思えば、やりとりこそできるものの、
気づけば深夜4時まで会話を続けることが大半。

閉じようとするまぶたをこすりながらも、
当時はジェシーとの会話から得られることに夢中だった。

 

この日、ぼくはジェシーにメールで直談判をしていた。

「VICE」日本版のVolume5 Number7に掲載されるファッションページ、
『Gas Face』の写真組みについて。

ジェシーの組んだ並びがあまりに突飛に見え、
8ページのなかで写真と写真のつながりが断絶されているように感じていた。

要するに、ジェシーの組み方が「なんかちがう」と思っていた。

 

「オレはGas Faceのレイアウトに繋がりが見出せない。
これはこういうレイアウトのほうがいいんじゃないか」

自分が考える最適なレイアウトをPhotoshopで組み、
昼のうちにメールで送り、ジェシーの反応を待っていたというわけ。

 

するとジェシーはこう返してきた。

「オマエは、オレがレイアウトしたページの組みが気にくわないと言う。

だけどガスってやつは、吸うとすぐに身体に吸収されるんだ。そして速攻でラリる。

つまり、オレが組んだ通りの反応が起きるってことだよ。分かったか?」

 

言われたことを受け、ページを見返してみる。

ガスを吸って(ページ左面)、すぐラリる(ページ右面)。

ジェシーの言い分を受けて見直すと、なるほど確かにおもしろい。

 

そもそもガスはおろか、
タバコを吸ったことすらない人間にはとうてい想像もつかないことだった。

 

この体験を通して、
ページの組みがいかに自分の経験に基づいて生み出され、
写真の見栄え以上に、ページの意図や現場の空気を伝えるためのものであること、
そして写真とはかくも言葉足らずでじれったいものであると思い知ったのだった。

 

VICE MAGAZINE – Vice Fashion “Gas Face”

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VICE MAGAZINE – Vice Fashion “Gas Face”より

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VICE MAGAZINE – Vice Fashion “Gas Face”より

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VICE MAGAZINE – Vice Fashion “Gas Face”より

 

 

この記事の著者

トモ・コスガ

トモ・コスガ

1983年生まれ、編集者。フォトグラファー・新田桂一に師事後、VICE MAGAZINE JAPAN編集部、EYESCREAM編集部、VICE MEDIA JAPANを経て独立。現在は故・深瀬昌久の作品管理と普及を目的とする「深瀬昌久アーカイブス」ディレクターを務めながら、主に写真関連の記事を書いたり、家事をしたり、ジムでマッチョを夢見たり、クワガタを飼育・採集、と多岐にわたって活動中。

http://www.tomokosuga.com/

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