T&M Projects代表の松本知己さんに、一体何者なのか?と新刊『魚人』について話を聞いた。

ども!小林です。今回から新企画「あなた何者なの?」第1弾をお届けします。

2015年末、写真家・田附勝さんの写真集『魚人』が出版されたんだけど、出版元は「T&M Projects」っていうところから。知ってる? もし知らなくても当然っちゃ当然。なにせ「T&M Projects」にとっては、今回の本が初めての刊行物だからさ。

 

1502879_10151864981154094_776816243_o松本知己さん(撮影:高橋宗正さん)
 

この代表が、28歳の松本知己(まつもと・ともき)さん。FACEBOOK上で共通の友達の、まあ多いこと多いこと。世の中どこでどう繋がってるかなんて、わかりゃしない。で、海外の友人、日本の写真関係の俺の友達はほとんどといっていいほど、みんな彼のことを知っている。

イベントなどで会えば話すことはあったんだけど、じゃあ現実、彼が今なにをやってんのか。あるいはこれまで、なにをしてた人なのか。知ってることといえば、写真集専門の出版社、赤々舎出身ってことくらい。意外に彼のことをよく知らなかったから、じゃあってこと話を聞いてきました。

 

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松本さんが作った、田附勝さんの写真集『魚人』。2冊でひとつの構成
 

TSK:じゃ、今日は色々聞かせてください。まず、松本くんは大学卒業してからすぐ赤々舎に入社したの??

松本知己:新卒みたいな感じで赤々ですね。

 

学生時代は写真部だったとか、出版社でアルバイトとかは??

大学の専攻は政治で、写真部とかではなかったですね。

そもそも写真に興味を持ったきっかけは、志賀(理江子)さんの写真集なんですよ。学生時代はそんなに写真に詳しかったわけではないけど、森山大道さんとか有名な人の名前はもちろん知ってたし、美術とか見るのがそもそも好きで。美術館巡りとかギャラリーとかはよく行ってるような学生でした。

 

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ここから下で紹介する写真は松本さんが『魚人』を作り上げていくまでの過程
松本さん「魚人のイメージを一気に並べているところを撮った写真です」
 

で、ある日。出版されたばっかりの『カナリア』(赤々舎刊)を手に取って。

 

あのでっかい写真集をよく手にとる気になったね?

いやー、なったんですよ。そしたら、赤々の事務所が当時早稲田にあって、自分の大学からも近かったから行ってみようってなって。

 

よく行ってみようってなったねw?

ま、行ってみようっていうか、まずメールを出したんです。本の感想と、なにか手伝えることがあったらお手伝いしますよみたいな。学生っぽいメールですね。

 

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松本さん「写真集の並びを検討してます」
 

へー。その頃も赤々舎ってイベントとかよくやってたんだっけ?

連絡したら、もう早稲田から清澄に移ってて。でも在学中にちょくちょく顔を出していた。

昔から、自分で看板を背負って仕事する生き方に憧れていたんです。赤々舎イコール姫野希美さんじゃないですか。それでまず赤々舎で働いてみたいなと思って、内容は忘れちゃったけど、姫野さんにメールを出したのが始まりですね。

 

(ん?イベントの話は。。。?)いまやってるT&M Projectsは、赤々にいた時からやってたの?ていうか、辞めたキッカケとかある?

辞めた理由に関しては、赤々舎で働いているなかで、自分にできそうなことがわかってきたのがひとつ。あと、ちょうど姫野さんが事務所と一緒に京都に移るという時期だったので、そのタイミングで辞めたんです。といいつつ、ちょうど子どもが生まれたばかりだったし、子育てもできる生活を変えたいって思ったのが一番ですね。

 

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松本さん「ダミーを作って、実際の大きさや本としての並びを体感し、より細かい修正をしていく」
 

(で、T&M Projectsはいつから始めたんだ。。。?ま、いっか)そっから独立してディストリビューションを主にやってたと思うんだけど、もともと出版をやりたいってのはあったの??

最初から出版は考えてました。ディストリビューションという形で他の出版社の写真集をB to Bで取り次ぐことより、作家を紹介するという意味では自分の出版物として出すっていうのが手段として強いし、自然な考えでしたね。

でも長期的に考えていたので、特に急いでなかったです。

 

で、満を持して田附勝さんの『魚人』を出した訳だけど、きっかけは?

一緒になんかやれたらいいね、って話は独立した頃からしてたんですよ。赤々の時は一緒に仕事したことはなかったんですが、もともと知り合いだってこともあって、前から田附さんと話す機会はあったんです。で、独立してしばらくしたら、あるとき田附さんから電話が掛かってきて。

 

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「束見本(作りたい本の判型を形にしたもので、中ページは白紙)に表紙の紙を検討したり、タイトルの位置を確認したりしています」
 

あの感じで?

そうそう。「こうゆうのやってんだどさ。どう出版とか?」って。僕も生意気な人間なんで「1回、ぜひ作品をみせてください。」って笑。

 

田附さんに笑?

そうそう笑。それがちょうど1年前くらいの話で、田附さんから「もう少ししたら八戸で作品展示するから観に来てよ」って言われて。それでは。って行って、見て、「ぜひやりましょう。」となった。

 

へー。写真集『魚人』って、写真集では珍しい「2冊でひとつ」のスタイルじゃん?最初からそれを想定してたの?

それは田附さんの意向ですね。

展示を見た時には全部一緒に展示されていたし、最初話してた時は「記憶の集積」っていうイメージだった。だから最初は僕も1冊って感じでイメージしてたんですけど。田附さんが「やっぱり2冊に分けたいな」って。1冊はハードカバーでどっしりした感じで、もう1冊はメモ帳的な感じが良いなあと。

僕としてもそれは腑に落ちる提案だったから、ではそれでいきましょう。って。

 

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「色校を確認。田附さんの写真は黒が重要。Kとは黒のこと」
 

編集は田附さんが全部やったの?

中綴じの方は、デザイナーの鈴木さんがやったんですよ。ちょっと変わった構成の本ですし、最終決定はもちろん田附さんなんだけど、最初に組んだのは鈴木さんですね。ハードカバーの方はまず、田附さんと鈴木さんの2人が組んだんです。

 

なるほどねー。松本君はダメ出しとかするの?

もちろん、意見は言いました。最初田附さんと鈴木さんで組んだものを見て、ここはこうなんじゃないですか?とか。使ってる写真は変えてないですが、並びは大幅に変えたり。

 

ページ数や使う写真って、すべて話し合いながら決めるの?

まず田附さんが写真の塊を持ってきて。「これで魚人だから」って笑。「他の写真も見せて下さいよ」とかは、そういうのが無いのは知ってますから、僕も言わないですし。「はい、わかりました」と。

 

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「オノウエ印刷さんで印刷立会い。奥の白衣の人が、プリンティングディレクターの花岡さん。とてもいい仕事をしてくださりました」
 

省く写真は?

ほぼ省いてないです。頂いた写真をすべて活かせるようなページ数を計算して設計していますね。

 

印刷会社は?

オノウエ印刷さんです。他にサンエムカラーさんと山田写真製版さんの2社から見積もりをとったんですが、僕が一番コミュニケーションとれるのがオノウエさんだったんです。

他の印刷会社も話はできるんですが、顔も知ってて、いろいろと無理も言えて相談できるのがオノウエさんだったので。

 

その2社は俺も名前知ってるけど、他にも良い印刷会社あるの??

色々ありますよ。ただ、印刷は感覚のコミュニケーションですね。例えば、僕がこの色を少し下げて欲しいって言った時に、A社の場合は数値を10下げる、B社の場合は5下げるって感じで、その感覚って職人技です。

印刷所については研究すればある程度わかるんですが、出版社やデザイナーさんが使い分けているなとわかったり、色々とあって面白いですよ。マッチさんはここをよく使ってるとか、中島英樹さんはここをよく使ってるみたいな。青幻舎だったらサンエムさんだね。みたいな。

会社やデザイナーって視点で印刷所を見ると色々わかって、そういう点でもじっくり観られます。あと、印刷所ごとで網点(あみてん/編註:印刷所で刷られる印刷物は、細かい点の集合で絵柄が表現されている。このときの規則的に並んだ小さな点の集まりを〝あみてん〟という)を見たりしても、わかることもありますし。

写真家との相性みたいなのもあると思います。良いものを作りたいんだったら、そういう見方もした方が、より良い本を作れると思います。

 

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「印刷立会いで待ち。田附さんとデザイナーの鈴木さん」
 

俺のなかで一番若い出版レーベルが松本君のT&Mだと思ってるんだけど。誰か若い人とか同じ歳くらいでいる?

いないっすね。

 

松本君は色々と写真集も見てきてると思うんだけど、一番好きな写真集ってなに?

うーん。影響を受けたって意味では、志賀理江子さんの『カナリア』ですね。あれを手に取った当時もわからなかったんだけど、ゾクゾクって鳥肌が立つような感覚を受けたのがあの写真集でしたし。

赤々舎にコンタクトとる前、志賀さんにコンタクトとって、トークにお誘い頂いたのが最初でしたね。だから、例えば森山大道さんの写真集とかもいろいろ見てるし、好きなんですが、ある意味、ターニングポイントになった写真集って意味でも、志賀理江子さんの写真集ですね。

 

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「オノウエの近くに諏訪大社があります。ちゃんとお祈りしました」
 

写真云々は別にして、本として好きな写真集ってある?

最近は Stanley/Barkerの本は好きですね。良い本作るなあっていつも思います。新しいものも良いし、過去の作品を掘り下げてあのクオリティで出すっていうスタンスも好きですね。もちろんお世話になっている赤々舎の本作りも好きですし、初期のMACKの本なんかも好きですね。

 

今後作ってみたい本ってある??

文字本を作りたいですね。批評本というか。売れなさそうな気持ちしかないけど。昔の『写真批評』とか『季刊写真映像』とか、ちょうど今読んでた『KEN』(編註:東松照明が立ち上げた出版社、写研から1970年代に刊行されていた雑誌)とか。当時の事を伝えてるのにいま読んでも格好いい。こういうの、やってみたいですね。写真だけっていうのももちろん良いし、好きなんですが、いつかは言葉を扱った本を作りたいですね。

今回お話を聞いた人:

松本知己さん(T&M Projects)

出版社「赤々舎」を経て、2014年「T&M Projects」を東京にて設立。赤々舎などの日本の写真集の海外流通を手掛けるほか、様々な媒体で書籍のセレクトやベストブックの選出、執筆活動、イベントプロデュース、展覧会のコーディネートなど多方面で活躍。また、NYやパリのブックフェアへの出展や、2015年3月香港でのブックフェア「HK Photobook Fair」をMark Pearson氏と共同主催(次回は2016年3月開催予定)。2015年11月に田附勝写真集『魚人』刊行。

http://tandmprojects-store.com/

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