沖縄の地に私的な因縁を導き出した野村恵子は言葉を寄せつけない写真の神秘に身を寄せながら先祖の潜像を見つめる。

因縁がある場所といっても、恵子さんが生まれ育ったのは神戸。それまで沖縄を肌で実感する機会は少なかったのではないかと思います。どのように〝因縁〟を写真に取り込んでいったのですか?

確かに、それは時間を要することでした。初めこそモノクロでスナップを撮ってみたけれど、いや違うなと考え直したのです。沖縄といえば、それまでに多くの写真家が撮影してきた場所。東松照明さん、藤原新也さん、そのほかにも地元の素晴らしい写真家たちがいる。そんななか、自分にできることはなにか?と考えた結果、等身大の沖縄を撮ろうと決めて。同世代の子たちや、いいなと思える子たちに声をかけて撮る。街の半径2km以内の狭い世界で、スナップショットではない写真をじっくり撮り始めたんです。

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たしかに『DEEP SOUTH』を見ると、外で声を掛けてパッと撮ったというよりは、じっくり時間をかけながら撮られた写真という印象を受けます。

ステレオタイプな沖縄のイメージって、空と海がすかっとしていて、いかにもキラキラしていて心地よい感じじゃないですか。でも私が見た沖縄は、もっと得体の知れない〝ぞわぞわ〟とした独特の空気感が立ちこめる場所のように感じられた。等身大の沖縄を撮ろうと決めたことから、そういうことがなんとなく感じて撮れるようになり始めたんです。そのおかげか、この本が出たときの本土の方々からの反応としては「見たことがない沖縄だ」とか、「本当にこんな子たち、沖縄にいるの?」と言ってもらえました。

とはいえ、恵子さんは本土からの人間。かつ、カメラという外部の好奇心の眼を携えていた。現地の人々との間に、いわゆる距離感は感じませんでしたか?

その点においては、しっかりと彼らの仲間になってから撮っていましたね。彼らの輪に入っていく。でも一緒にお酒を飲んでいても、実はそんなに酔わないようにしていて、チャンスがあれば脇に置いたカメラで撮ったりだとか(笑)。

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