体験型お化け屋敷でスランプを脱した細倉真弓はガーリーフォトやティルマンスに拠り所を見出しながら知り合いの知り合いに声をかけてヌードを写す。

ども!

小林です。今回は恵比寿・G/P Galleryで絶賛個展開催中の細倉真弓さんに話を聞いてきました。

前回話の小林健太くんに続き、細倉真弓さんとこに話を聞きに行こうと思ったのは、細倉さんがイギリスの出版社『MACK』から本を出すって聞いたから是非その辺の話を聞いてみたいと思ったからだったのだ。

だったのだ。って言ったけど、本当はその話を聞こうと思ってたら、ちょうど同じタイミングで展示をやるって聞いて、「展示と本、どっちについて聞こうかな?」って細倉さんに訊いたら、「展示!」って即答されたので、じゃあ行かないわけにいかないよなって思った。

最近、展示の面白さが気になってる。どう見れば良いのか分からないともあったりするけど、作家やギャラリーの人から話を聞けるのも楽しいし、見て、おお!って思うし、更にそれを買えるみたいなのもすげーことだなって思うし。PCでもスマホでも作品は見ることが出来るけど、どんな大きさで作品を見せたいのかってのも興味があったり。

で、細倉さんの展示。是非観に行って欲しいんだけど。今回は写真作品だけじゃなくて、映像もあって楽しい。写真作品は同じ額内に2つのイメージが収まってたり、写真が立体的に配置されていたりして。展示ならではの面白さがある。作品同士の連鎖というか、2つで1つのイメージが生まれるってことじゃん? それによって作品の解釈も幅が広がるし、なによりデカい作品がドンと掛かっているから、作品としての存在感みたいな『力』を感じたり。

前回の『クリスタル ラブ スター ライト』と比べると今回、作品の物語性は少し身を潜めた感じ。7色の織りなす空間がひとつの作品として機能していて、なんだか不思議な感覚に包まれる。床に設置された映像では、細倉さんの視点を追体験できる仕掛けに。3分ほどのループ映像なんだけど、ポーズを取るモデルはいかにも写真を撮られているかのような立ち振る舞い。これ、実は映像が途切れてブラックアウトした瞬間、細倉さんは写真としてのシャッターを押しているってことらしい。単に写真じゃ見ることのできない〝無言の対話〟っていうか、そういう雰囲気を伝えてくれる貴重なものの気がする。

展示って、やっぱ面白いわ。じゃ、インタビューいってみようか!

(聞き手:小林孝行/インタビュー構成・キャプション:トモ・コスガ)

細倉真弓さん

いつもたいていオチャメな細倉真弓さん

えっと、今日はよろしくお願いします。(いきなり展示のことから聞いていって良かったんだっけ?)展示ってどうやって決まるの? まず後藤繁雄さんから声がかかる感じ?

そうですね。半年前とか。年末年始くらいに1年のスケジュールを決めるんですよ、後藤さんと。

綿密に連絡をし合うもんなの?

人によるんじゃないですか? 後藤さんはマメだから、折々に電話がかかってくる。こういうイベントがあるけど、お前来るか?とか。最近なにしてるんだとか。

へー。今回の展示はどういう流れで?

今回は、前回の個展から会期が1年半くらい空いてて。そのあいだにUNSEENとか、中国での展示があったんです。そこでちょいちょい、追加追加で出していた。一番最初に出したのが、去年9月のUNSEEN。そこで3点を出して。それで面白かったから、このシリーズで作るかみたいな。そのあと、数を増やして展示したのが中国での11月の展示。中国では額装をしないから、裏打ちだけで。ホントにもう実験的な。それらを経て今回の個展に行き着いたから、割とラクでしたね。

2012年に『KAZAN』。2013年に『Floaters』。2014年に『クリスタル ラブ スターライト』。で、今回の『CYALIUM』。実際、1年じゃ割と寝かす時間があまりなくて。今回みたいに1年半とか空いたのは良かったですね。徐々にそうしていきたい。

毎回新作を望まれるじゃないですか。プレッシャーとかすごいんですか?

どうなんだろ……まだないですけど。

やりたいことの方が大きくある?

締め切りがあるから、じゃあこんなことしようかな、と思っていたことを形にできる感じですかね。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

作品を見ている感じでは、かっちりと作品を作るタイプなのかなって思ったけど。撮影しに行ったりとか、自分でモデルを用意したりだとか。そういうのは、どのタイミングで?

つまりそれは、最終形を見据えて最初からやってるのかってこと?

そうそうそうw。(あの質問で、なんで俺が聞きたいことがわかんの?w)

ホントにストックというか。元々の写真はだいたい、普通に撮ってて。特に後からこうしようとか考えている訳じゃないんですよ。写真として、いい写真を日々撮るじゃないですか。それを後から見返して、再構成して面白くなりそうなイメージとイメージを合わせるというか。そういう感じなので。

それで今回は全部、2枚か3枚組みなのか。

そうなの。

この構成は初めから考えていたんですか?

このシリーズを始めたとき、画面分割みたいなのを考えていた。異なるイメージを繋げて、ひとつのイメージを見せる。そういうことをやりたいと思ったのが最初で。

もともと写真集とかで、見開きで見せたりするじゃないですか。私はそれが割と好きで。セットで見せたりだとか。壁で2枚セットで見せたとき、1枚だけで観る時より、別の意味が勝手に生まれる。そういうのが面白かった。同じ額に入れて、タテに並べると、ひとつの作品として観れるじゃんみたいな。

作品にはけっこう古い写真も入ってるの?

入ってる。でもそこまで古くないかな。えーとね、台湾にレジデンスしてたときのも入ってるから、それはもう3年前とか。

けっこうがっちり決めて撮ってるのかなってイメージがあったけど。

リサイクルできる感はありますね。

撮りたいと思うとき、いつもカメラを持っている? おっきいの使ってるんですか?

大きいやつですね。ペンタックス645っていう中判カメラ。まあまあ重くて。持ち歩くのはちょっとイヤですね。

じゃあ撮るときは、撮るぞ!っていうときだけで。

そうそう。

なんていうんでしょ。気分が乗らなかったら全然撮らないんですか?

いや、撮りますね。持っていったら(笑)。2、3枚は撮ります。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

スランプってあるんですか?

スランプは『KAZAN』とかやる前かな。これで形ができた的な原型があって。こういうスタイルでいきますみたいなのが、いまいち分からなかった時期が一番、なにを撮ったらいいか分からなかったかな。

この記事を読んでくれる若い人たちのためにも、細倉さん流のスランプの脱け方を教えてもらえたらいいなと思って。ひたすら撮ってた?

ひたすら撮っていくと精神論みたいなのになっちゃう。そういうことよりも、新しい人に会って、いままでいたところじゃないところへ……私の場合、きっかけが『EXPOSED』っていうグループ展だったんですよ。後藤さんが大阪でやっていたグループ展があって。

それって、矢島陽介さんが行ったやつ?w(詳しくは矢島さんのインタビュー記事を読んでね!)

そう、それ。彼が数珠つけてきたとき(笑)。であれ、数珠はそんときじゃないっすって書いてあったけど、そんときだからねって、私(笑)。あんときつけてたから。

で、そのときに新しい友だちができた。万代洋輔くん、鵜飼悠くんとか。それで一緒に遊ぶようになって。それがけっこう大きかったですね。

自分の住んでる世界が変わると、写真に影響するってこと?

しますね。それまでは日芸の写真学科で。まあ写真ですよね、いわゆる。でも万代くんとかは現代美術よりの人だった。かつて、清澄白河にビルあったやん? 複合ギャラリービルみたいな。小山登美夫とかシューゴアーツとかが入ってたビル。あそこにmagic roomっていう、精神科医でアートコレクターの岡田聡さんが趣味でやってるギャラリーがあった。そこで展示することになって。

それで万代君と一緒に行くと、あのときの日本の現代美術があそこに集まってて。しかもヒロミヨシイでそのときやってたのが、クリスチャン・ホルスタッドのものすごい展示。もう人生で観た展示でホントに一番くらいの。人生変わった展示みたいなのが丁度やってた。

それは普通のギャラリーで? 売ってた?(普通のギャラリーってなんだ??)

売ってたけど、商品というか、体験型お化け屋敷(笑)。パフォーマンスとか、身体の不自由さがテーマだったんだけど、明らかに別世界。こんな世界があるのかみたいな。人生変わった瞬間でした。トラウマ展示。そういうきっかけというか、こういうのがあるんだ!っていう。自分が拘ってきたものが段々ちっちゃく見えてきた、みたいな(笑)。そうなると、新しいものが出会いが見えましたね。それがターニングポイントみたいな感じですね。

そのころはスランプ抜けた?

いや、それがきっかけで抜けた感じかな。それで友だちと一緒に展示したり、遊んだり、話したりすると、ちょっと変わりますよね。考え方が変わると、作品も変わるから。

イギリスの出版レーベル、oodeeの本は?

『KAZAN』と同じくらいですね。

いきなりダミアンから話がきた?

2011年、イタリアで「FOTOGRAFIA」という写真フェスティバルがあって。そこで、日本人女性作家のグループ展が開催されたんです。川内倫子さん、楢橋朝子さん、志賀理江子さん、私、ウツユミコさんみたいな(笑)。それをダミアンが観て、連絡をくれた。それで2011年のオフプリントにABPも出してて。oodeeも出してた。私はそのときパリに行ってたから、現地で会って。じゃあなにか作りますかって。

あれは京都を撮ってたの?

そう、京都駅の南側の九条辺りが、もともと同和地区で。そこの団地がけっこうすごい。もともとのそういう場所に、戦中戦後に韓国系の人が入ってきて。川の上に勝手にバラック小屋とかを建てていたから、番地がない。だからゼロ番地とか呼ばれている場所で。その人たちを国とか京都市が区画整備するために団地を作って、移らせたというところで。

細倉さん、地元は京都?

そうですね。

じゃあ九条辺りって今やってる川崎に通じるような。

そうですね。それはあるかもしれない。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

へー。じゃ、写真のきっかけは?

高校のとき、ガーリーフォトブームがありまして。

あー。あったw。

だから特別ですね、ヒロミックス。スーパースター。

細倉さんは、俺よりちょっと年下だから、デジカメ全然だったでしょ?

最初はフィルムでしたね。写るんですとか。あとビックミニとか。

ケータイにカメラがついたのも。

いつだろ、あれ。ケータイでとかは写真始めた後ですね。

日常生活にカメラとか。小林健太くんとかは、物心ついたころにはあったと言っていたけど。

まず「写るんです」みたいな小さなカメラができたっていうのが、日常的に写真が撮れるようになったんだよ!みたいな感じでしたよね。

ヒロミックスを知る前から撮ってた?

撮ってないですね。意識的には撮ってない。撮っても普通の、いわゆる遊びに行って撮るとか。

うん、中学生くらいで作品撮りしてたら怖いからw

当時くらいから、カメラもかわいいのが色々出てきた。黒くないやつ。

で、ヒロミックスを観て、写真家になろう!と思った?

いや思ってない、高校生だし(笑)。で、高校が附属だった。そのままエスカレーターで行けるから、特に美大とか選択肢もなくて。そのまま四大の文学部。

それは東京?

京都。立命館。文学部のなかに、上田高広さんっていうグリーンバーグの翻訳したりしてるモダニズム美術専攻の先生がいて。その人のゼミだったんですけど。

写真部に入った?

入った。

あ、入ったの?w

入った(笑)。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

写真部っていうと、俺より上の世代に訊くと、鉄道研究会レベルのお宅っぽいメカ好きがいるようなイメージなんだけど。w

私の頃にはガーリーフォトの恩恵で、女子がいっぱいいましたから。

じゃあちょっと華やかな感じのw。そのときの人たちとはまだ付き合いあるの?

今度ね、同窓会(笑)。

するんだw?

そのタイミングで帰省するんですけど、今回の本のサイン会をそのタイミングに設定してます(笑)。

ヒロミックス以外に好きな写真家はいたんですか?

最初にヒロミックスを好きになるじゃないですか。あと当時流行ってた雑誌はロッキンオンジャパンとか、H、スタジオヴォイスみたいな。スタジオヴォイスの「写真集の現在」特集は割と観てて。私、高3の修学旅行がアメリカだったんですよ。

当時インターネットとか(笑)、そんなになかったでしょ? あったけど、そんなに情報がなかった。調べたい情報が。で、写真集を向こうで買おうと。オシャレなヤツ。それでスタジオヴォイスの『写真集の現在』を観ながら……

ギリ、Amazonが出てきた頃だっけ?

Amazonはもうちょっと後じゃない? だって私が足繁く通ってたアートブックショップみたいなのがあってさ。そこでAmazonの話ですごく盛り上がって。「これから本屋さん大変だね〜」みたいな話で盛り上がったのが大学生の頃だったから。

それでアメリカで写真集を買ったんだ?

うん、事前に調べて。これとこれとこれが欲しいって。それでジャック・ピアソンを買った訳です。当時(笑)。

そっかー。

1990年代後半くらいで。ジャック・ピアソンの超エロい写真集を。

ちゃんと持って帰れたの?

大丈夫でしたね。それでジャック・ピアソンを好きになり。でそのあとくらいに、ホンマさんとかを観るんですけど、どハマりしたのはティルマンスだったんですよ。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

なるほどなぁ~……ティルマンス好きな人は当時も多かったよね。

90年代後半から00年代前半のティルマンスっていったら、みんな好きだよね。

一般の人でも好きな人多いけど、作家のなかにも好きな人が多いっていうのがティルマンスなのかなあ。

ティルマンスって、ヒロミックス経由で観れる。日常的な写真、っていう入り口で入れるのに、読み込んでいくと、全然ずっと読める。そういう、間口の広さと懐の深さがティルマンスのすごいところ。

ヨーロッパとアメリカで特に違いというか。気にしてない?

全然気にしてないですけど、ルフみたいな〝ザ・作品〟も面白いとは思うんですけど、ハマりはしなかった。

前に細倉さんに行商して本を見てもらったとき、写真集を観ながら「もうちょいだな、惜しい!」みたいなことを言ってて。そういうことを言うのが、俺が知ってる限り、田附さんと細倉さんくらいで。もうちょっと、っていう感覚が面白いなって。それは作品として、もし自分が撮るならこうする、みたいな?

物足りなさですね。懐がもうちょっと深い人(笑)。読み込み甲斐というか。たとえばアーロン。身体の一部があって、お花とかそういうのがパンパンってある。そうすると、基本的に形態とかフェティッシュ、それ以上には読み込み辛い。以上!みたいなところで終わるけど、ピアソンやティルマンスはもうちょい読めますよね。

歴史だったり?

うん、社会的背景もあるし。ポートレートひとつとっても、なんていうの? こう観ろ!みたいな見せ方じゃなくて、観る人ごとに開かれている感じもあるし。一冊の本があれば、いろいろ分岐する点があるというか。

そっかー。その辺が今日聞きてえなって。(急に言い出す俺)

私の場合、懐の深さ。掘り甲斐(笑)。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉さんの場合、作品をこう観て欲しいとかある?

それはあまりなくて、どちらかというと、勝手に観て欲しい。あまり表情がないとかあるんですけど、観ている人が勝手に感情をつけ加えて観るじゃないですか。或る程度は、こう観て欲しいもありますけど(笑)。

自分が意図しなかった面では、自分の作品に対して面白い批評があったりとかは過去にあった?

たぶん無意識でやっていたかもしれないことを言語化してくれる人はいますね。海外の方でしたけど。

それはいいなと?

それはそういう風に読み込んでくれてましたね。

日本でそういうのを足りないなと思うけど。批評自体がそんなに生きていないというか。若い書き手もいるのかもしれないけど、発表の場がいまそんなにない気がするし。

その辺はずっと言われてるけど、割と難しい問題だなと思ってて。写真の批評はけっこう難しいと思う。技術で語れないというか。絵だと技法で語れたりする。技法から文脈を読み込んだり、歴史とか。でも写真って押せば写るから。だから結局、なにが写ってるかとかそういう話になるじゃないですか。どういう関係性でとか、作家のパーソナリティとか。その辺の難しさをどうやって乗り越えるか(笑)。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

確かに難しいな。うまい写真って、なんだろ?

えー……割とずっと見てられる感じとかかな。見てて飽きないとかなのかなあって思いますけどね。さっき言った、懐が深いってやつにしても、1枚の写真でそれを実現するのってけっこう難しくて。作品全体として懐が深い。だから……いい写真っていうのは1枚の写真に対してってことですか(笑)?

1枚かなあ? 1枚だね。(考えてなかった)

だと話がズレちゃうけど。うまくなくても、いい写真はあるって話でしょ(笑)? 下手だけどいいっていうのもあるし、うまいけど下手な写真もあるってことでしょ。

うまいってなんだろ?ってなんとなく最近思ってて。構図とかピントとかそういうことなの? それとも、なにをうまいって言うのかな?

ティルマンスが10年前くらいにオペラシティで展示したじゃないですか。そのトークショーに行って、質問コーナーで手を上げたことがありまして。そのとき多分、同じようなことが気になってて。ティルマンスの写真って、そんなにうまくないというか、いわゆる技術的にうまいと言われる写真じゃない。でもすごくいい写真。じゃあそういうとき、ティルマンスにとって、写真の技術というか、テクニックがどういう意識でやっているのかって。「あなたにとってテクニックにはなんの意味があるんですか?」って質問したんですよ。

いい質問するなーw。

そのとき言ってたのが、テクニックがなんのためにあるのかをそれぞれが考えなきゃいけないと。彼の場合、自分が生きている世界を、自分が愛している形で表現できるフォーマットがT3や35mmのカメラだと。その光の感じとかも、全部僕がこういう世界を見たし、そういう風に見て欲しいみたいな。それを作り上げるために僕の技術は存在している、みたいなことを答えてくれた。

超いいこと言うなー。ティルマンスの答えは細倉さんにとっても近かったってこと?

そうそう。だからうまいっていうのが、なんのためにうまいのかっていうのが、内容と合致していれば、うまくていい写真だし。別にうまさっていうのが、作品にとって邪魔になる場合もあるわけじゃないですか。親近感とかインティマシーみたいなものとはまた別のベクトルだったりするから。でもちょっと難しくて、うまい……

でもいまのすごく分かりやすかった。腑に落ちます。

そういう認識でいますけどね。

細倉真弓さん

声が魔女宅のウルスラに似てる細倉真弓さん

僕もすごく漠然と質問しちゃったから、ごめんなさいw。

トークショー終わったあと、知らんおばちゃんに「あんたの質問良かったわよ」って(笑)。

それは言われるでしょw。細倉さんって、展示行ってる方ですか?

割と行ってる方だと言われます。

展示……展示見るときに気をつけてることってあります?

展示見るときに気をつけること(笑)?

俺なんかは漠然と見て、ステートメント読んで、よく分からなくて、すぐ帰ることが多いんだけどw。作家がいれば聞くけど、いなければ分からないまま帰ることもある。

写真だけの展示はそんなに行かなくて。美術全般なんですけど。

細倉さんは気に入ったら何回も観に行くんでしょ?

気に入ったら何回も行きます。なんだろな……気をつけてること……自分がおもしろいと思うか思わないか。それと作品の出来はまた別じゃないですか。

気にならなければすぐ帰っちゃう感じ?

いや、一応ね、私けっこう粘るんですよ(笑)。でもたいてい、ステートメントがあるんで、タイトル見て、メディア見たら、まあ分かるじゃないですか。そこで分からなかったら、しょうがないみたいな(笑)。難しい。どういう作品かにも寄るんですけど、作品がしっかりしてるけどこちらが足りない場合と、ただ単に作品が良くない場合とあって。前者の場合は頑張る(笑)。

タイトルとメディアを見るっていうのが、あと制作年(笑)。それとステートメントをちゃんと読む。あとギャラリーの人に訊く。

そうだよね。訊くのが一番だよね。

分からなかったら、訊くのが一番いいと思います。そしたらけっこう、見方が変わることもありますからね。そのためにギャラリーの人もいるし。なんだか当たり前のことですいません。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

買う気で行くこともあるんですか?

あまりないですね。買えたらいいなって思いますけど。

欲しい作品とかってあります?

クリストファー・ウールとか。1枚欲しいですよね。

ペインティング?

うん。

いいっすねー。サイ・トゥオンブリーじゃなくて?

二択だと、ウールですね(笑)。

展示のとき、並びや大きさは独りで決めるんですか?

相談はあんましないですねえ。

人の意見は聞くんですか?

訊きますよ(笑)?

後藤さんからとか、こうすればいいじゃんみたいに言われたりするの?

こうすればいいじゃんはないですけど、こういうのを見てみれば?とかはありますね。

w。そういえば、ギャラリーに所属したのっていつなんですか?

2009年くらいじゃないですか。

それは後藤さんから声が?

なんとなく。

それは展示してから?

前後じゃないですか。

入ることに抵抗じゃないけど、葛藤みたいなのはなかったですか?

所属すること自体には特に葛藤とかはなかったですね。

でも色々と活動が制限されたりとか。

そういうのは、入ってみないとたぶん分からない。

じゃあ横田大輔くんとか、小山泰介さんも同時期?

小山くんやうつさんのちょっと後に、私は入りましたね。で、横田とかはもうちょっと後。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

ギャラリーに入って良かったことって?

展示が定期的にできること。後藤さんがああいう感じだから、海外にも広がっていく。

モデルはどうやって探すの?

街中でとかはあんまなくて。知り合いの知り合いとか、そういうレベルだから。人づてで、あの~って(笑)。写真やってるんですけど~って、なんとなく。20前半のときってさ、周りも若いしかわいい。一緒に遊びに行って、撮ってれば良かった。キャンプとか行ったら、みんな川とか入るやん? するとみんな脱ぐ。自然とそういう状況になるんですけど、だんだんキャンプ行かなくなる(笑)。

行かないよねw。行っても川入らないしw。

30超えると、男の子とかだんだんお腹とか出てくるしさ。

そっかー。

女の子もお化粧濃くなってくるし(笑)。それはそれで味わい深くて良いんだけど、まだ私がそのことを持て余しちゃう感じだから。 だからまわりに自然にいた人が、待ってると来ないから。探さないといけない。

モデルの趣味は変わったりするんですか?

あんまり変わってなくて。基本的には男っぽい、女っぽい人よりは、どっちか分からない感じが好きなので。髪の毛が短い女の子と、髪の長い男の子がよく出てきます。見てる人が、これどっちだろうなって感じで、すぐ判断できないようにはしたいと思ってますね。最終的には。

もう何年撮ってます?

10年くらい。

一番変わってないとこってどこですか?

一番変わってないとこ(笑)? 一番変わってないところ……ポートレートが一番大事ってとこですかね。

機材は?

変わってないですね。

壊れたら同じのを買う?

ですね。

最近フィルムが高い?

高い。

作品に影響するぐらい?

私はまとめて撮るから、そのときの出費がかさむくらいかな。

細倉真弓 最新個展『CYALIUM』より

ほんとかわいい細倉真弓さん

シリーズって、自分の中で区切りはあるんですか?

一応ありますね。その度毎に終わりますね、本を作ったり展示をしたり。でも本が大きいのかな。

そのあとに続けようとは思わない?

そのシリーズを? そのシリーズにも寄るんですけど、『Floaters』は技法区切り。『KAZAN』だとできるかな。

今回、MACKから出た本『Transparency is the new mystery』は?

これは作品としても4年前くらいのですけどね。

すんなり決まったんですか?

すんなり過ぎて、疑ってました(笑)。

出版リストに細倉真弓の名前が、けっこう早い段階からドンって出てたけど。

1年前に川田さんのトークで来てたじゃないですか。そのときに会って、色々見せて。そのときにじゃあこれでリパブリッシュしましょう、ってさら~って。私は私で、他に特に出せる新しい作品もその時なかったし(笑)。でもあまりにさらっとしすぎてて、ん? 聞き間違いなのかな?みたいな。

印刷は?

ドイツでした。

表紙が意外な感じだったけど。ヌードで来ないんだ?みたいなさ。

1回、ダミーを作って。中のレイアウト、これぐらいのサイズ感とか。そういうのは私が作って送って。それがそのまま採用された。サイズ感も提案のままなんですよ。結晶の写真が大きくて、他が小さいのもそのまま。編集をちょこちょこっと変えてもらったのと、表紙周りはマックにお任せです。

海外で出した方が海外でもっと販売されるから。

それはちょーあると思います。しかもPRとか、超しっかりしてる。売るためにちゃんとPRするっていう体制が素晴らしいと思いました。

マック、しっかりしてんなー!  というわけで展示のことについて全然訊いてないけど、それは見る人それそれが感じてくれればいいかなって思います。えっ、ダメ? 大丈夫! 細倉真弓さんの『CYALIUM』めちゃくちゃカッコいいから!

細倉真弓さんの個展『CYALIUM』は恵比寿のギャラリー、G/P Galleryにて5月15日まで!と思ったら会期が延びたんだって! 5月29日までやってるから見逃さずに観ていってみてください。

gpgallery_160327

細倉真弓 Mayumi Hosokura

CYALIUM

2016. 4.2 Sat.-5.15 Sun.
G/P gallery Ebisu

Opening reception: 4.2 Sat.18:00-20:00
Talk event: 4.24 Sun. 16:00-17:30

G/P gallery 恵比寿では、細倉真弓の個展「CYALIUM」を開催いたします。
写真家・細倉真弓は、1979年京都に生まれ、立命館大学文学部、及び日本大学芸術学部写真学科を卒業後、国内の様々なグループ展に参加してきました。初期の代表作「KAZAN」(2009-11年)では、東京郊外を中心に撮影した自然の姿とヌードの若者を撮影し組み合わせることで、東京という都市を繊細で力強い感受性で描き出し、独特なエロスと美しさをそなえた新しい東京の写真表現として国内外から注目を集めました。今春、イギリスの出版社MACKより、ヌードと結晶を組みあわせたモノクロームの秀作『Transparency is the new mystery』が発売されるなど、ますます国際的な評価を確立している、日本写真家の一人です。
第4回目となるG/Pgalleryの個展では、2015年より取り組んできた新作「CYALIUM」より写真作品およそ8点と映像作品1点を展示いたします。モノカラーのプリントによって高揚感ただようエロスを魅せた前作「クリスタル ラブ スターライト」(2014年)を発展させた本作において、細倉は、撮影から暗室での作業プロセスを経てイメージがプリントに固定されるまでに起こりえた可能性を、写真表現の一部に取り込もうと試みます。ぜひご高覧ください。

「それは何度でも現れる、そしてその度に少し違う」
CYALIUM というのは、化学発光による照明器具「cyalume(サイリューム)」に金属元素の語尾「ium」を加えた造語である。
各イメージはカラー印画紙の中にあるカラーカプラーおよび感光銀の6色、R/G/B/Y/M/Cにブラックを足した計7色から選択される。
暗室の中でのこの6色(+1色)の選択は、過去のある一点から無限に分岐するパラレルワールドをとりあえず七つの世界へと限定し可視化する作業である。
暗室でプリントの度に手元に残るテストピースの束を見てはそれら一つ一つが可能性であると感じる。永遠に決定されずに宙に浮かんでは何度でも少し様子を変えて現れる。
それはrawのままあり続ける。決定は常に仮設だ。
そうであればシャッターとシャッターの間で記録されなかった隙間すらもその可能性の一つなのだと気付く
その時間の無防備さとけなげさに驚きながら。
細倉真弓

「結晶化した世界――細倉真弓『CYALIUM』に寄せて」
Text= 磯部涼
毎月末、細倉真弓から送られてくる写真を見る度に感じ入るのは、写真に漂う温度が独特だと言うことだ。それは、筆者が某月刊ゴシップ誌で書いているルポルタージュ「川崎」のためのベタ焼きで、タイトルの通り、東京近郊の都市・川崎区で撮影されている。連載のテーマは、重工業地帯として知られる同地に、工場や繁華街での仕事を求め、あるいは周囲に立ち並ぶ安価な住宅を求め、日本中、どころか世界中から集まってきた労働者が形成するコミュニティに、日本の未来の姿を見るというものだ。しかし、その光景は、希望に満ち溢れているとは言い難い。細倉は、日本人や韓国人、フィリピン人の少女たちが揃ってチマチョゴリ姿でパレードを行う、多文化主義の理想を体現したような祭に参加出来る日もあれば、土砂降りの中、区外からやってきたレイシストたちと、地元のアンティファたちがぶつかり合うフューリー・ロードに並走させられる日もある。しかし、そういった、インパクトの強い現場に立ち会っているのにも関わらず、彼女の写真は、スラムで生きる人々の生命力を強調するわけでもなければ、彼らの暮らしにまとわりつく死の匂いを強調するわけでもない。黒みがかった青が印象的なプリントの中では、生と死が溶け合い、ある種の霊的な時間が流れる。ルポ「川崎」がヒューマニズムやスキャンダリズムのクリシェに陥らずに済んでいるのだとしたら、細倉の写真が果たしている役割は大きいだろう。
また、そのような彼女の視点――あるいは世界に対する理解は、商業媒体以上に、個人的な表現を通してよりはっきりと伝わってくる。例えば、細倉の作品に往々にして見られるコンセプトの特徴は、ヌードと、人間以外のものを組み合わせるということだ。彼女の初めての写真集『KAZAN』(アートビートパブリッシャーズ、2012年)も、若者の繊細な身体と、火山の荒涼とした風景で構成される。ただし、前者の動性を強調するために、後者の静性が使われているのではない。ページを捲る毎に感じるのは、人間と動物と植物と鉱物の境の曖昧さだ。一方、『Transparency is the new mystery』(自主制作、2013年)では、ドラマティックな展開がない分、ヌードと結晶ははなから同等のものとして目に映る。翻って、『クリスタル ラブ スターライト』(TYCOON BOOKS、2014年)は、ヌードとネオンサインで構成されているが、後者のつくりものじみた光が前者を照らし、非現実に閉じ込めてしまうのと引き換えに、後者は前者から生命力を得たかのごとく、艶かしく輝いている。そして、そういった存在や感覚の流動性は、新作展示「CYALIUM」に至って、生と死が、動と静が、まるでマーブル紙のように溶け合ったまま固定される。その美しさに見入りながら、そもそも、写真というメディアには、被写体を殺すと同時に、半永久に生き長らえさせる奇妙な性格があることを思い出すのだ。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

ページ上部へ戻る