村越としや『沈黙の中身はすべて言葉だった』

  • 2016-1-10
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タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで、1月9日(土)から2月13日(土)まで、村越としや写真展「沈黙の中身はすべて言葉だった」を開催。福島県須賀川市出身の村越としやは、東京に拠点をおきながら、2006年以降故郷を被写体に選び、静謐でありながら力強い風景の中に、そこで過ごした自身の記憶をなぞるように継続的に撮影を行っている。2011年から2015年にかけて撮影された作品約7点を展示。

information

村越としや
『沈黙の中身はすべて言葉だった』

タカ・イシイギャラリー
フォトグラフィー/フィルム
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
URL

開館時間11:00〜19:00
日・月曜、祝日休廊

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村越さんは自身の故郷、福島県を撮り続けている。

震災を経て、困惑の体験を経ながらも、手法は変えることなく撮り続けることを選択し、いまに至る。

震災と原発事故が起こったとき、今までと同じようには撮れなくなるんじゃないかと思った。何をどうしたらいいかもわからないまま、実家に帰ったのは震災から10日後だった。

今後、福島で写真を撮ることには、震災や原発という枕詞がついてしまう。だからまず、被災地としての福島を撮ることを試した。だけど、しっくりこない。それで自分はどうしたいんだ?そんな疑問が常に付きまとった。簡単に答えが出る訳じゃない。それなら今まで通りに福島を自分のために撮ろうと思った。

村越としや、2014年5月に開催された
リフレクション展に寄せた文章より抜粋

今回の展示で村越さんが見せるのは、パノラマ写真。

一般的にぼくたちが知るパノラマが「引き算」なのに対し、村越さんのパノラマは「足し算」に見えた。そこで、会場にいた本人に話を聞いてみた。

使用したのは、このために制作された中判カメラ2台をつなげたものだという。だから「足し算」に見えるのかーと関心しながらも、そんなことできるの?と驚いた。そういうことができる職人さんを見つけたという。

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シャッターのすぐ近くに「パノラマ切り換えスイッチ」があって、それを入れると、フィルムの感光部分が上下さえぎられる。できあがる写真はいつもより解像度の低いものだが、その代わりにプリントサイズがL判の2倍近くになるから、なんだか迫力があっていいねと一時期はやった機能。なんてことはない、「引き算」でいつもより写る範囲を減らしただけの話。

その点、村越さんのパノラマは「足し算」だが、デメリットもある。
そう、ファインダーだ。

単に繋げることはできたとしても、フィルムの感光部分と同等の範囲が見えるファインダーを作ることは簡単じゃない。村越さんに質問すると、やはりファインダーはあてにならないという。それにしたって、展示された作品のフレーミングには、隙という隙がない。

「この作品ではセレクトが大切でした」と村越さん。

心で撮る、なんて言ったら胡散臭くなるけれど。
どこかを見つめようとしながらも、どこにも焦点が合っていない。そんな印象は前々から、村越さんの写真に受けていた。今回のパノラマ作品では、それがより際立っていた。ファインダーのないランドスケープ。

しかもパノラマにすることで、不思議なことに、写真は写真らしさを失う。ほら、90度回転させてみると、なんだか掛け軸みたいだ。そうか、これは水墨山水画なのかとか。そう見返すと、なんだかフレーミングもそういう風に見えてきたり。

村越さんの展示の前には、野村浩さんの展示を見てきた。野村さんはゴッホの絵を「ぼかす」ことで、ゴッホらしさの描写から遠のき、しかし逆説的にゴッホらしさの真理を巧妙に描いていた。村越さんは、ファインダーを失ったカメラで福島の大地と向き合うことから「風景」を「景色」に変えられたんじゃないか。

この展示を通じて、村越さんが見ようとしてきた「景色」がぼくにも見えた気がする。

この記事の著者

トモ・コスガ

トモ・コスガ

1983年生まれ、編集者。フォトグラファー・新田桂一に師事後、VICE MAGAZINE JAPAN編集部、EYESCREAM編集部、VICE MEDIA JAPANを経て独立。現在は故・深瀬昌久の作品管理と普及を目的とする「深瀬昌久アーカイブス」ディレクターを務めながら、主に写真関連の記事を書いたり、家事をしたり、ジムでマッチョを夢見たり、クワガタを飼育・採集、と多岐にわたって活動中。

http://www.tomokosuga.com/

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