マッギンレー、エド、サザーランド……8人のフォトグラファーがワンちゃんたちに注いだ、数え切れない愛と畏敬の心が写真集に。spinning booksから『DOG.』刊行。

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世界中のフォトグラファーたちが撮り収めた愛くるしいアニマルフォトを写真集として編むインディペンデント・パブリッシャー〈spinning books〉から、待ちに待った写真集シリーズ第2弾 『DOG.』が、ウー ワンワン!と産声を上げた。発行者は、かつてフリーマガジン時代の「VICE」日本版 初代編集者を務めた松下和幸さんと、その妻・真知(まち)さんの2人。

 

様々なフォトグラファーによる猫ちゃん写真を集めた前作『CAT.』に引き続き、今回の『DOG.』もストレートなタイトル通り、世界中のフォトグラファーが寄稿したワンちゃん写真をまとめた1冊だ。寄稿者は、いまや世界的に名の知れたフォトグラファーばかり。ライアン・マッギンレー、エド・テンプルトン、ピーター・サザーランド、パトリック・ツァイ、名越啓介、佐野学、ジム・マンガン、ディアーナ・テンプルトン……。

その1人ひとりが、松下さんが2000年代初頭の編集者時代から絆を持ち続けてきた写真家たちであり、大事な仲間だ。しかしこの豪華ラインナップよりも見逃せないのは、今回の『DOG.』に収録された1枚1枚に、まさしく寄稿者であるフォトグラファーたちからワンちゃんに対して向けられた無条件の愛で溢れている、ということ。

Copyright © Peter Sutherland

Copyright © Peter Sutherland

ピーター・サザーランド、エド・テンプルトン、そして佐野学は、人と犬の身近な関わり合いをさり気ない場面から引き出す。まるで世界は人の隣りに犬を添えたかのような、祝福に満ちた日常のワンカットばかり。

Copyright © Jim Mangan

Copyright © Jim Mangan

『DOG.』のカバーを飾ったジム・マンガンは、ユタ州グレートソルトレイクを撮影の舞台に選んだ。見渡す限りなにもない〝塩の砂漠〟を、友人の愛犬「ペニー」が全力疾走する姿を描くことからエターナルのフリーダムを象徴させることに成功している。そういえば、彼はこれまでにユタ州を中心に、砂をテーマにした三部作の写真作品を制作していたっけ。その背後にまさか、駆け巡る犬の姿があったなんて。

Copyright © Ed Templeton

Copyright © Ed Templeton

さらにパトリック・ツァイが参加することで、『DOG.』はいわゆる美しい犬写真集に収まることなく、良い意味でカオスになっていく。パトリックは自身の自宅ベランダから定点観測による写真をしばしば撮っている。今回はそのシリーズから、野良犬が登場した日の一部始終を寄稿。11ページにわたって、パトリックによる手書きのテキストと共に、謎の野良犬の行動が紐解かれる。これがきちんとオチまであって、クスリと笑わせてくれるほど絶妙な中継ぎの役を担っているのだ(パトリックのページはぜひ本書を手にとって確かめてもらいたい)。

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Copyright © Keisuke Nagoshi

犬たちの猛々しい側面も忘れたくない。世界中を旅して写真を記録する名越啓介は、これまでの旅のなかで写した犬たちの勇姿を寄稿。ザラザラとしたモノクロームに包まれた彼らは決して言葉を発することはないが、真っ直ぐレンズを越えて見つめる犬の瞳や後ろ姿から、私たちが忘れかけている野性的な側面を見事に描写。

Copyright © Ryan Mcginley

Copyright © Ryan McGinley

ライアン・マッギンレーはエレガントな風景に愛犬を溶け込ませる。愛犬「ディック」が大自然のなかに悠々と佇む様子や、ガソリンスタンドで自動車にガソリンを入れる素振りまでこなしていて、とても犬とは思えない〝人間らしさ〟。これまで壮大なヌードフォトが大きく取り上げられてきたライアンの〝おふざけ〟オフショットをこうした形で眺められるところからは、2000年から2002年にかけてVICEのフォトエディターを務めた過去を持つライアンとVICE日本版編集に携わった松下さんの絶妙なタッグによる賜物だろう。

Copyright © Deanna Templeton

Copyright © Deanna Templeton

そしてトリを務めるのは、エド・テンプルトンの妻でありフォトグラファーの、ディアーナ・テンプルトン。クラシカルなブラック&ホワイトと完全ノートリミングの洗練されたスナップフォトとしてディアーナが見せてくれるのは、犬とその飼い主の心の繋がりだ。猫好きの人はつい嫉妬してしまうほど、飼い主から片時も離れないワンちゃんたちの姿を収めながらも、写真としてのクオリティも抜け目がない。たとえばもしディアーナのページを破って額に入れて飾ってもきっと、その魅力は損なわれることなく放ち続けるだろう。

〈spinning books〉を営む夫婦、松下和幸・真知。Photo by Naoko Maeda

〈spinning books〉を営む夫婦、松下和幸・真知。Photo by Naoko Maeda

普段はクールなイメージを貫く著名フォトグラファーたちの異なる一面を見事に引き出すことに成功したと言える『DOG.』。それもきっと、松下さんと真知さんという1組の夫婦が手を取り合いながら仲睦まじく、フォトグラファーたちと手を組み、彼らが愛してやまない動物たちの写真を編む姿勢が素直に、そして色濃く反映されたからに違いない。いろんな愛がたっぷりと注がれた、かわいらしくもクールな1冊がここに誕生した。

写真集『DOG.』は限定300部。B5サイズのソフトカバーという、友だちにプレゼントするにも決して堅苦しくない装丁でありながらも、100ページという存在感のボリュームにぎっしりと詰め込まれた、フォトグラファーたちからワンちゃんたちに向けられた数え切れない愛と畏敬の心。それは写真として、止まった時として、そして愛する家族の一員として共に過ごした証として、きっとなにか私たちに残してくれるものがあるはずだ。

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〈spinning books〉の写真集シリーズ第2弾 「DOG.」の日本先行発売イベントが、10/14(金)〜16(日)まで代田橋・communeにて開催されるとのこと。気になった人は訪れてみては。

これまでの旧タイトルはもちろん、松下さんと真知さんの2人がNYとLAで買い付けてきた「おもしろ雑貨」も販売するんだって!

◇営業時間◇
10/14 fri : shop open 16:00 – 20:00
10/15 sat : shop open 14:00 – 20:00
10/16 sun : shop open 14:00 – 20:00

commune / commune Press
東京都世田谷区羽根木1-12-10-2F
http://www.ccommunee.com

この記事の著者

トモ・コスガ

トモ・コスガ

1983年生まれ、編集者。フォトグラファー・新田桂一に師事後、VICE MAGAZINE JAPAN編集部、EYESCREAM編集部、VICE MEDIA JAPANを経て独立。現在は故・深瀬昌久の作品管理と普及を目的とする「深瀬昌久アーカイブス」ディレクターを務めながら、主に写真関連の記事を書いたり、家事をしたり、ジムでマッチョを夢見たり、クワガタを飼育・採集、と多岐にわたって活動中。

http://www.tomokosuga.com/

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