田附勝『魚人』刊行記念イベント

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田附勝写真集『魚人』の刊行を記念して、森岡書店銀座店にて展示販売イベントを開催します。今回の展示販売は写真プリントではありません(写真の展示は1月30日より青森県八戸で開催されます)。「一冊の本を売る書店」というコンセプトの森岡書店では、写真集『魚人』とともに、写真集にも登場するような網や旗、ヤッケといった大久喜の日常にあるものを展示、一部販売いたします。「魚人」の撮影地である青森県八戸の港町・大久喜の方々にご協力いただきました。

写真集の刊行記念だから写真プリントを展示するというかたちではなく、写真集の中の世界を銀座のまちに持ってきて、よりその生活に近づいて、体感していただければと思います。

information

田附勝写真集『魚人』
刊行記念 展示販売イベント

2016年1月9日(土)~ 1月17日(日)

開催時間: 13時 ~ 20時
*1月11日(月・祝)は定休日
*最終日は18時まで

会場:森岡書店銀座店
東京都中央区銀座1-28-15
鈴木ビル1階
URL

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銀座に店を構える「森岡書店」さんは、決まった期間、1冊の本のみを取り扱うという変わった本屋さん。店内にはいつも、ひとつの本が山積みになっている。今日から1週間(たしか)は、田附勝さんの期間。

田附さんは先日、新刊『魚人』をT&M Projectsから刊行したばかり。今回もそれに関連した催し物。せっかくの機会だから、新刊と一緒に、額装した写真を飾るのかと思いきや、田附さんが用意したのは「八戸から送ってもらった漁師たちの道具」だった。

漁師が日ごろ使うのであろう道具、それから日ごろ口にするのであろう干し柿や干物が店内に「転がっていた」。おおよそ「展示されていた」とは言えないくらい、どれも「ころがっていた」。

干し柿のいくつかは、運搬中に田附さんがむしって食べていたらしい。その話もあってか、「用意した」「準備した」というより、どこかからどこかへ「運ぶ」かのような。その過程を異次元で見た、かんじ。

田附さんは近ごろ、「遠くのものを身近に感じること」に意識を置いている。

窓の外に太平洋が見える。
雨の日も晴れの日も風の日も
海は洋々とそこに横たわる。

7,000キロの海を隔てたオレゴンの浜でも
人々は同じように生きている。
大きな世界で私たちは生きている。

八戸の「魚人」の実像は
いつのまにか海の向こうの「魚人」とつながる。

写真展『魚人』チラシより

 2011年3月の東北大震災。これに伴う津波により、青森県八戸市は大久喜漁港の厳嶋神社からは、鳥居がながされてしまった。しかしその2年後、鳥居の「笠木」という部位が、偶然にもアメリカはオレゴン州にながれ着いた。

その鳥居を追って、田附さんは2015年5月、アメリカはポートランドを訪れる。現地のガレージに収められたそれを写真に収め、また日本に帰ってきた。

同年10月、鳥居の笠木が、ポートランドの多くの人々の協力によって、大久喜の浜小屋に返還された。

写真集『魚人』は、返還されるまでの過程も収めている。

大久喜集落に何度も通う中、お世話になっていた漁港にある神社が2011年3月11日に起きた津波に見舞われ、鳥居の一部の笠木がアメリカのオレゴン州の浜にたどり着き、その笠木がポートランドで大事に保管されているというニュースを知った。

この出来事が、漁師の船に乗りこのままどこまでも遠くに行けるのではないかと漠然と思いを馳せていた私をアメリカに向かわせることになった。

遠いと感じていた場所は、近くにあるのだと気付かされた。

写真集『魚人』田附さんのあとがきより

森岡書店で目撃した「ものたち」はもしかすると、田附さんがポートランドで目撃した「鳥居の笠木」に近い体験を、感じさせてくれるものなのかもしれない。

その「もの」を「それ」として、予めつけられた固有名詞や、道具としての働きを知ることが重要なのではなく、その「もの」が「八戸でどう息づいているのか」。そのための触媒に過ぎず、その「感触」をもってして『魚人』という本を開いたとき、また新たなことを感じることができるのかもしれない。

ちなみ森岡書店では現在、一部の「もの」が購入可能だ。

ぼくは、入ってすぐのテーブルに「置かれた」釣り針をもらい受けることにした。もともとは「8コで1500円+税」のところを、田附さんの鶴の一声により、「2コ500円+税」にかわった。

ぼくも8コは要らないなあと思っていたと思っていたのと、会場から「もの」がなくなっても良くないよねと、2コを譲り受けることにした。

「さて、このままでは持って帰れませんよね」と、森岡書店の店主が丁寧に包んでくれることに。しかし次の瞬間、「あいててて!」という叫び声。どうやら釣り針が、店主の指にひっかかってしまったらしい。

「これどうしたらいいの、ねえマジでどうしたらいいの?」と嘆きながらも、なんとか取り外せた様子。

いかにも古道具なものは、見た目こそ「おしゃれ」なものだが、それは魚を海から引っ張り上げるために作られた「武器」にすぎない。魚は魚で、引き揚げられてからも、負けてなるものかと懸命に暴れ、ときには漁師を海に引きずり込もうともするだろう。

釣り針は漁師にとって、魚とたたかうときの武器のひとつ。ひとたび食らいつけば、二度と外れないようにと工夫も凝らしているだろう。海から遠く離れていても、それは殺伐としている。そのことを忘れて扱うと、痛い目にあう。

本来、浜辺でしか体感できないことが、ふとしたきっかけで身に襲いかかる。写真だけでは伝わらないものとして、そのざわざわしたものを教えてくれるのが、今回の「八戸のもの」たちのような。ほら、これも「遠くのものを身近に感じること」のひとつ。

「実験だよ、実験!」——店の外で田附さんが楽しそうに言い放った。

ぜひ、みなさんも足を運んでみてください。
会場の空間に包まれながら写真集を開くのも、おもしろかった。

ああそれから、田附さんの写真展『魚人』が青森県八戸市で開催されます。1月30日から2月21日まで、八戸ポータルミュージアム「はっち」にて。
http://hacchi.jp/programs2/gyojin/index.html

この記事の著者

トモ・コスガ

トモ・コスガ

1983年生まれ、編集者。フォトグラファー・新田桂一に師事後、VICE MAGAZINE JAPAN編集部、EYESCREAM編集部、VICE MEDIA JAPANを経て独立。現在は故・深瀬昌久の作品管理と普及を目的とする「深瀬昌久アーカイブス」ディレクターを務めながら、主に写真関連の記事を書いたり、家事をしたり、ジムでマッチョを夢見たり、クワガタを飼育・採集、と多岐にわたって活動中。

http://www.tomokosuga.com/

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